ウクレレにとって最も過酷な環境があります。
それは車の中。
特に気温が30度近くになっている日の
無人の車内が危険な事はご存知ですよね。

夏場のニュースによく出てきます。

幼児を車の中に置いたままちょっとお買い物。
車に戻ったら子供がぐったりしていて
熱中症・脱水症になっていた・・・。

「ちょっとの時間だから大丈夫だと思った」

車の中は危ないんです。

ペットのワンちゃん、一緒にレストランに
連れて行けないから
車の窓を少し開けて友だちとお食事。
楽しいおしゃべりが終わって車に戻ったら
すでにワンちゃんは・・・。

こんな悲しいことはありません。

ウクレレも同じなんです。
ちょっとの時間だから大丈夫だろう。
今日の気温くらいならね。
そんなことはありませんよ。

ウクレレはしゃべってくれません。
体調が悪いのもわかりません。
高温の車内で極度に乾燥していても
(つまりは脱水症状ですね)
しゃべらないからわかりません。

そしてウクレレのブリッジの接着面が
温度の上昇で限界を迎え
ブリッジが飛んでしまいます。
(コマ飛びと言います)

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ウクレレケースを開けた瞬間、
ショッキングなシーンを目の当たりにします。

可愛い大切なウクレレがこんなことに・・・。
このような状況は年に数回起きています。
車の中だけではなく、暖房を付けた部屋の中でも。
エアコンの暖房が直接当たるような場所、
ストーブのそば、部屋の中の高い場所など
温度変化が激しく起こるような場所で
同様のことが発生します。

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接着部分から剥がれているのがわかりますか?
もちろんウクレレは弾けなくなります。
ウクレレの作りが悪かったのではありません。

ウクレレの部品接着に使われている接着剤は
「にかわ」という天然素材のものが多く使われます。
この「にかわ」は、伝統的に楽器の接着に使われています。
木の接着に適していて、古い古い歴史があります。

何百年も前のヴァイオリンなども
このにかわによって組み立てられているというわけです。
ヨーロッパでの長い歴史があり、
過去の多くの名工たちが
使ってつくった楽器が、
現在まで使い続けられているんですね。

さて、この「ニカワ」の正体って何でしょう?

実は皆さんが知っている「ゼラチン」です。

日本では、主に食品や医薬品などに
使われる純度の高いものをゼラチン、
日本画の画材および工芸品などの
接着剤として利用する
精製度の低いものを膠(ニカワ)
蹄を原料とするものは hoof glue と言います。

ツタンカーメンの墓から出土された木工品にも
にかわが使われていたそうです。
つまり5000年も前からある接着剤というわけです。

ヴァイオリンの組み立てに、
「にかわ」が使われているのには理由があります。

強力な接着で木への影響が少ない。
修理をする(高級ヴァイオリンなら尚のこと)場合
蒸気を当てることによって「にかわ」がゆるみ
パーツを外して修理が出来る。

というようなことがあります。

優れた楽器名工だからこその「にかわ」なんでしょうね。


ですが、高温になる車の中に置いておくと
「にかわ」が溶けてしまい、
楽器がバラバラになるというわけです。

「にかわ」は60度~65度で
溶解する性質があります。
元々はゼラチンと同じ素材・性質なわけですから、
このことはすぐに想像できますね。

さあ、無人の車のなかの温度は
一体何度になっているんでしょう?

なんと70度を超えてしまうんです。
窓を少し開けていてもあまりかわりません。

JAFの実験データがありますから
ご興味のある方はこちらから>>>>

つまり、何をどうしたってウクレレに良いわけがない。

「俺のウクレレは大丈夫だったぜ!根性が違うね!」

そんな事はありません。
バラバラにならなかった、運が良かっただけ。
ウクレレの乾燥バランスは確実に崩れているはず。
弦のテンションによって歪みが出ているはず。

もしも、ウクレレを車の中に
置いたままにしている人がいたら
すぐに注意してあげて下さい。
何も良いことはありません。

ちょっとのお昼ご飯の時にも一緒に連れて行きましょう。


このウクレレのブリッジは剥がれた部分を綺麗に修復し、
張り直しをします。
「にかわ」が完全に硬化して安定するまで
一切触りません。もちろん弦も張りません。
ゆっくり、じっくり安定を待ちます。

元々の音の響きは失われるかもしれませんが、
あなたの大切なウクレレは再起します。

そしてまたあなたを癒やす友だちとして共に過ごしてくれます。

今度からはいつも一緒に連れて行ってあげて下さい。



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ジャムズウクレレでは、ウクレレの修理・メンテナンスも承ります。

楽器によっては可能・不可能があります。
まずはご相談を・・・・。